「え?」
1テンポ遅れて聞こえた、神楽くんの間延びした声。
聞こえてなかったかな、と思い、あたしはもう一度同じ言葉を繰り返す。
「だっ、だからね、しばらく、」
「何で?」
でも、神楽くんの耳にはしっかり届いてたらしい。
被せて来た声は、怒ってるような戸惑ってるような、どちらとも取れない声色だった。
だからあたしは慌てて答える。
「ほ、ほら!今、テスト中だし…。あたしも早く帰って勉強、しないと、」
「明日は日和が得意な英語じゃん。」
「で、でも、一応受験生なんだし、神楽くんも勉強しなきゃいけないでしょ?」
「俺は平気だよ。」
言い訳がましく言葉を並べても、神楽くんは涼しい顔して即答してくる。
あたしはそれ以上、何も言えなくて。
逸らした視線は、床をさ迷いながら神楽くんから逃げようと必死だった。
すると、神楽くんは溜め息を吐いて言う。
「日和、何か変な事考えてない?」
「………、」
「俺は日和と一緒に居たいのに、日和はそうじゃないの?」
まるで責められてるような気分。
そうじゃないのに。
あたしだって一緒に居たいのに。
何で、こうなっちゃうの?

