梅雨真っただ中の7月の始まり。
あれから神楽くんは週5でバイトに励み、更にテスト期間が重なって
二人で過ごす時間はほとんどなかった。
目標や夢なんてまだわからないけれど
一応、受験生だし今回ばかりはあたしも頑張ったつもり。
その成果か、あんなに苦手だった数学はかなりの手ごたえがあった。
なのに、素直に喜べないのは
胸につっかえた“不安”という名の塊が心を支配しているからだろう。
最近、心から笑ったのは
いつが最後だったかな。
「ふあああ……。」
隣から聞こえた大きなアクビに、声を掛ける。
廊下から見える空は
太陽を隠して湿気を帯びていた。
「眠たそうだね…、」
「ん?そうでもないよ?」
「でも、さっきからアクビばっかりだよ?」
「それは日和の気のせいじゃねー?」
そう言いながらも、神楽くんはもう一度小さくアクビをした。
「あ、今のは本物のアクビね。」
なんて、そんな冗談ですら悲しくなる。
テストが始まってからの神楽くんは
バイトから帰った後テスト勉強をしてるらしく
ここ最近はずっとこんな感じで。
それでも、暇を見つけては会いに来てくれるのだ。
勉強にも、バイトにも
そしてあたしにも、神楽くんは妥協したりなんてしない。
それがきっと、神楽くんの魅力なんだと思う。

