二 人 日 和



“ごめんね”

その言葉に、ちゃんと気持ちがあるってわかってる。



神楽くんは優しいし、バイトだって休まずちゃんと行ってて。

そんな彼を買って、店長はもう一日、と頼んだんだろう。

神楽くんの性格からして頼まれたら断れない人だし、きっとあたしの事もそれなりに考えてくれてると思う。


わかってるんだよ、ちゃんと。


でも―――。



「日和?」

「……え?」

「何ぼーっとしてんのよー。ほら、早くボタン押して!」

「あ、う、うん。」


ごめん、と言いながら
食券機のボタンをポチリ。

出て来た食券は、目的だった中華丼ではなく
特に食べたかった訳でもない焼きそば。



「日和が焼きそばなんて珍し~。」

「そ、そう?」


苦笑いで返事をして
食堂の一番奥、席を陣取った神楽くんを一瞥してみる。

桜井くんと楽しそうに話すその横顔は、さっきの事なんかもう気に留めてない様子。


「俊介はカレーでしょ。神楽は何だったっけ?」

「…多分、中華丼だと思う。」

「またぁ?好きだねー、神楽も。」


玲のぼやきを聞き流し
あたしは手元の食券を前に、気が付かれないように溜め息を吐き出した。




一言相談して欲しかった、なんて
そう思うあたしはワガママなのかな。

神楽くんは、あたしとの時間はそれ程大切じゃないの…かな。



「…はぁ。」

作り笑いで口にした焼きそばは、ちっとも美味しくなかった。