タクシーを降りて中を覗き込む。
もうこれっきり二度と会えないかもしれない人。
「ありがとうございました。・・・・・・あの・・・」
聞いたら迷惑?
ちょっと優しくしてくれたからって、図々しいかな?
続きの言葉を言えないまま、短い時間が流れていく。
「どうしたん?」
「・・・・・・。」
彼の目を見たまま、何も答えられない私。
「運転手さん、ちょっと待ってな?」
彼は優しい笑顔で私の頭を軽く撫でると、タクシーを降りてくれた。
「どうしたん?気分悪いんか?」
俯く私の顔を覗き込み、優しく訪ねてくれる。
「アドレス・・・」
「えっ?」
「アドレス、聞いてもいいですか?」
一瞬、驚いた顔をして、しばらくの沈黙。
「はははっ!なんやそんな事か。めっちゃ深刻な顔するから心配するやん!」
彼の笑顔が、しぼみかけた私の心に勇気をくれた。
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