いつまで経っても滑り出せない私にノブくんが言う。
「未希、大丈夫やから頑張ってみ?」
「出来ない。・・・怖い。頑張れない。」
「ほな俺先に行くで?未希はゆっくり下りておいで。」
えっ?
ええっ??
ええーっっ!?
スーッと滑り出したノブくんが少し行った所で振り返る。
「未希、ここまでおいで!!」
「ノブくんの鬼ーっ!!」
思いっきり叫んで、私はゆっくり滑り出す。
でもすぐにバランスを崩して、すごい勢いでノブくんの横を通り過ぎた。
「キャーー!!止まんなーーいっ!!」
体が大きく揺れて、有り得ないくらいに豪快な滑りっぷり。
前の人に突っ込みそうになった瞬間、私の腕は一気に引かれて、後ろに倒れ込んだ。
「あっぶねー」
私の下で同じ様にひっくり返るノブくん。
「もーうっ!だから嫌だって言ったのにーっ!!」
限界を超えてついに泣き出した私をノブくんは後ろからぎゅっと抱きしめる。
「未希ごめん。泣かんといて?」
「もう嫌だーっ!!帰りたいーっ!!」
スティックを放り投げる私はきっと注目の的だ。
「未希、俺がおるから大丈夫やって言ってるやろ?絶対助けたるから、一緒に下まで行こ?」
耳元で優しくそう言って、もう一度きつく抱きしめてくれる。
ノブくんにそう言われると、本当に大丈夫な気がしてきたから不思議なもんだ。
「うん。頑張る。」
.


