「どうぞ」 ガチャリと玄関を開け、入るよう促す。 「お邪魔します」 喜一君が入ったあと、あたしも入る。 「久しぶりだな。凜の部屋」 懐かしそうに周りを見渡す喜一君。 「そ、そんなに見なくていいよ」 「はは。可愛いね凜」 そう言って喜一君は笑った。 もし目の前にいる彼が、普通に愛してくれたら。 別れなくてすむ。 あたしも普通に愛せるのに――――…… 「もう、忘れ物ないかな」 喜一君が立ち、あたしも立つ。 「あ、トイレ借りていい?」 「うん……」