喜一君がなんと言うのか、不安と恐怖でしかなかった。
「そう……。わかった」
しかし、返ってきた言葉は違った。
仕方ない。
という雰囲気が漂っていた。
予想外で、言葉も出なかった。
あっけらかんとした顔するあたしに、喜一君は。
「そんな驚いた顔しないで」
「え、いやっ……別に……」
驚くに決まっている。
なにか企んでいるんじゃないか、って勘繰ってしまう。
「あのさ、凜の部屋にある俺のもん取りに行っていい?」
この言葉にあたしは
「あ、うん」
そう答えてしまった。
やめとけばよかった、と後悔することになるのはそう長くはなかった。

