部屋を出て、再び隣人を訪ねる。
チャイムを鳴らし、しばらくしてドアが開いた。
「はい……?」
さっきの男と違い、女の人が出てきた。
「あの、どうかされましたか?」
何も言わない俺に、女の人は言った。
「いえ……なにか、叫び声が聞こえて……」
「すみません、苦手な虫が出て……」
申し訳なさそうに笑いながら、彼女は言った。
「虫、死にましたか?」
「え……?あぁ、はい。なんとか」
「もしかしたら、まだいるかもしれません。部屋を確認しましょうか?」
何かおかしい。
俺はただそう感じ、すぐに引き返さなかった。
「え、でも……」
「お願いします。困ったときは助けあわないと」
なんとも嘘くさい言葉を吐き、部屋に上がった。

