必死に喜一君から逃れようとするが、喜一君がそれを許さない。
なんて自分はバカなんだろう。
覚醒していた頭のせいで、先のことなんか考えていなかった。
「離してっ………!」
「離さないよ」
生温い、湿った感触が、首筋を這う。
なんともいえない感覚が全身を襲う。
「…………っ!!!」
体全部の力を振り絞って喜一君を押すと、不意をついたらしく床に倒れた。
あたしはその隙に動かない体を全力で動かし、ドアに向かった。
四つん這いになるその様は、死に物狂いなんて言葉がぴったりだと思う。
「いゃぁ……」
助けてっ助けてっ助けてっ!!
とにかくなにかに縋るようにあたしはドアに走った。

