しばらくして喜一君がキッチンから戻ってきた。
お盆を手に持って。
その上には、サラダとスープ。
「食べなよ。お腹空いたでしょ」
怖かった。
さっきまでのノコギリの光景が、頭の中でチカチカと点滅を繰り返す。
悪魔のような、鬼のような、そんな顔をしていた人が、今は平然と食べ物を差し出している。
何かあるんじゃないか。
スープの中に毒薬が入っているとか。
食べさせて油断してるとこを殺すとか。
考えれば考える程、これから起こりそうなことが頭を駆け巡る。
「食べて」
手に無理矢理スプーンとフォークを握らせれ、恐る恐るスプーンを口に含んだ。
味は………おいしい。
確かにお腹は空いていた。
そのせいかあたしはお皿に入っていたものを全て体内へと流しこんだ。

