再び流れる、静かな空気と“恐怖”。
何も出来ない自分が腹立たしかった。
「チッ……」
喜一君は軽く舌打ちをした後、あたしの腕を掴みリビングへ連れていった。
生気が抜けたように、とろとろと半ば引きずられるように、あたしは歩いた。
「座って」
言われた場所に静かに座り、何をするのか警戒する。
喜一君はキッチンに行き、何かしている。
何気なく回りを見渡す。
杏の生活感が溢れている。
友達だと……親友だと思っていた。
だけど、あたしだけだった。
利用。
すべては復讐のため。
それだけを考えて、この数年一緒にいた。
今更涙なんか出ない。

