そのカラマーゾフだが、実は彼は、とき
どき神の声が聞こえることがある。

本当にときどきで、しかも本人にも、
その声が本当に神さまご本人の声なのか、
その使いの天使の声なのか、まったく
無関係の霊や妖精の声なのか分かって
いない。

しかしカラマーゾフはこれまで、その
声の言うことを聞いて悪いようになった
ということが一回もないので、

彼はその声を神様の声だと信じて、
努めて従うようにしているのだ。

(ちなみにカラマーゾフは、おかしく
 思われるのが嫌なので、このことを
 他人に言ったことは一度もない)

その「声」が、一年ぶりにカラマーゾフ
に訪れた。声は告げた。

(川に沿って東に向かいなさい。求める
 ものはそこで見出されるであろう)