-チリン-

また聞こえた。空耳か?

私は希衣菜との話をやめ、耳を澄ました。

「どうしたの? アリス」

私の様子に気がついたのか、春陽が話しかけてきた。

「ん、なんかさっきから鈴の音がして……希衣菜たちは聞こえなかったのか?」

「ふえ、何が?」

希衣菜は持ってきたチョコを口に銜えながら聞いた。

「それがね、なんか今朝から鈴の音が聞こえるんだって」

春陽が希衣菜に教えた。

「え、それって普通のシャランって音じゃなくて?」

希衣菜はチョコを食べながら私にきいてきた。

私はその音を思い出しながら、

「うん、チリンとかリンリンっていう音だったよ」

と言った。

すると希衣菜と春陽は様子が一変した。

希衣菜は食べていたチョコを床に落とし、春陽はいじっていたケータイを落とした。

「ちょっちょっちょっちょっと待って、今何て言った?」

春陽は驚きすぎたのか、ろれつがあまり回ってなくて何て言ったかよく分からなかった。

逆に希衣菜は目を輝かせながら、

「えっそれ本当?」

と聞いてきた。

私は二人の様子の一変ぶりに戸惑いながらも、

「うっうん」

と答えた。

「えっじゃあさ、その音どこから聞こえてきたの?」

希衣菜は落としたチョコを拾ってまた食べだした。

「ん~と、確か図書室の方だったかな?」

私はあいまいな答えを出した。

春陽はしばらく黙っていたが、落ち着いたのか口を開いた。

「前、ばあちゃんが言ってた。学校でチリンっていう鈴の音が聞こえたら、大変なことが

起こるって」

「そうそう、それ私も聞いた」

希衣菜はうんうんとうなづきながら言った。

私は引っ越してきたので何の事か分からなかった。

「それ、どういう意味だ?」