「いつもありがと、春陽にアリス」

希衣菜はそう言ってえへへ、と笑った。

「も~う、希衣菜ったらかあいいんだから~ね、アリス?」

私は希衣菜の頭をなでなでしながらアリスにも聞いた。

「ああ、うん」

アリスはボ~としながら答えた。

「アリス? あーちゃん?」

希衣菜がアリスの前で手を振ってみる。

アリスはハッとして希衣菜の方を向いた。

私はそんなアリスの様子を見て、希衣菜に言った。

「希衣菜~、今のアリスはね、何を言っても無駄だよ」

「何で?」

希衣菜が興味心身に身を乗り出して私に聞いてきた。

「だって今日は、あーちゃんの愛しい彼氏が帰ってくる日だもん」

最初は黙って聞いていたアリスが、

「ちょっ春陽っ! お前さっきから黙って聞いていれば……」

と軽く怒鳴った。

そうだ。アリスには6歳年上の彼氏がいて、今日は久々に仕事から帰ってくる日なのだ。

ちなみに、希衣菜にも彼氏はいる。

同い年の山仲拓海という男の子で、私にとっては昔からの友達だ。

「あっそっかあ。いいねえ、ラブラブで」

希衣菜が羨ましそうに言った。

「えー、希衣菜たちもラブラブじゃん」

私は彼氏がいない。ま、好きな人はいるんだけど……ね。

そんな話をしていたら、もう30分たっていた。

-ガラララ-

「はいはあい、先生だよ~」

先生が入ってきた途端、教室は静まり返った。

席を立っていた男子たちは、急いで自分の席に着いた。

それから授業が終わり、私たちは教室へ向かった。



「ふわあ、疲れた~!」

希衣菜が大きな欠伸をし、眠そうに眼をこする。

「またお前は。だったら夜中まで起きてるんじゃないよ」

アリスは希衣菜の机に座り、腕を組んだ。

「あはは。相変わらずの乗り突っ込みだねぇ」

私はそんな二人の様子を見て、おなかを抱えてケラケラ笑った。

するとアリスが神妙な顔つきになった。

「どうしたの? アリス」

私はそんなアリスの様子に少し引っかかった。