「…さび…しいよ……っ…一人に…しないで…」

「……………」


せきをきったように泣き崩れる佐和子を今すぐにでも駆け寄って、抱きしめたいと思うのに

それをやってしまったらもう、折角の決意も何もかもが崩れ去ってしまいそうで出来なかった。


「……さーちゃんはズルイよ」


俺は皮膚の色が真っ赤に変色するくらい強く拳を握る。


「俺の気持ち知ってて、よくそうゆう事言えるよね!俺がどんな気持ちでここから離れたかわかってないでしょ…!?」


怪訝な顔で俺を仰ぐ佐和子。

何怒ってるの?と、彼女の大きな瞳は訴えかけているようだった。


それが更に俺の中の怒りを掻き立て、感情のコントロールを失わせる。


「佐和子は俺より親父を選んだんだろ!?今までみたいになんていくわけねーじゃん!俺は、あんたを母親だなんて認めない!!今までも、これからもだ!!」


こんな事を言いたかったわけじゃないのに。


溢れ出る言葉を止めることもできずに俺は魂の限り叫んでいた。


初めこそ、俺の叫びに瞳をぱちくりさせながら驚いていた佐和子だが、

少し間を置いた彼女はすぐに冷静さを取り戻し

今までに見せた事もないような芯の強い視線をこちらにむけながら聞き取れるか聞き取れないかくらいの小さな声で、


「……思わなくて…いい」


そう言った。