腕には傷。

鞄の中には、手紙。

心には罪悪感。

そして、決心する。

「あたしは・・・死ぬんだ」


机に鞄を置き、手紙と屋上の鍵だけを持つ。

屋上に向かい、鍵を開ける・・・。

夏なのに風が冷たく感じる。

風の音が何よりも虚しく感じる。

手紙を地面に置いて、上靴を脱いでそれを重石代わりにする。

手紙の封筒には、「遺書」の文字。

ふと、思い出した。

ポケットにナイフを入れてきたんだった。

あたしは誰よりも醜い死に方をしなきゃ駄目なんだ。

誰よりも、醜い人間でないと駄目なんだ。

首をナイフで、切る。

顔をナイフで、切る。

足をナイフで、切る。

体中ほとんどのところにナイフで傷をつけた。

あたしの身体は血だらけになった。

屋上の地面には、血がポツポツと垂れていた。

ピチャッと醜い血の落ちる音がした瞬間、ゾクッと恐怖が込み上げてきた。

もう、戻れない。

後ろにはもう、あたしの道は消えたんだ。


そして・・・。

高い、白い柵を乗り越え、足の踏み場がギリギリのところに立つ。

怖い、怖い、怖い・・・。

でも玲はもっと怖い思いをした。

あたしはもっともっともっともっと怖い思いをしなければ罪は消えない。

怖い思いをしても、あたしの罪は消える事はない。

リストカットしても、死んでも、あたしの罪は一生消えない。