「あのー、ここ、やってるんですかー?」
がらんとした教室にどんより顔の店員が一人…
これではお客さんがやってるのかどうか疑うのも無理はない。
「あ…えと…」
“やってます”
その一言がどうしても言えなかった。
あれ…どうしたんだろう…。
声が…出ない。
手も…動かない。
ハッキリしない茨の様子を気味悪がって、お客さんは眉間にシワを寄せながら教室のドアを閉めた。
再び静寂を取り戻した教室に
遠くで響く、リズムを刻む音が風に乗って届いた。
ライブ…始まったのかな。
見たかったなぁー…。
ふと、仲よさげに廊下を歩く二人の姿がフラッシュバックする。
視界が歪んだ。
わかってた。
私には手の届かない人だって事くらい。
―キョン様!猛烈に好きです!好きすぎて心臓止まりそうなんです!―
―はぁ?ばっかじゃねーの。てかキョン様って何!あんた誰?―
灰色だった孤独な毎日に一瞬で色をつけてくれたあなたに恋をした。
私を無視しないで向き合ってくれた初めての人。
みんなは私を馬鹿にして笑うけど
あなただけは違ったね。
諦めないで
追い続けていれば
いつか想いが叶うような気がしてたんだ。
「……っく………」
だけど…
もう、一人では立てません。
あなたが別の人を見ている限り…。

