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「わぁっ!なにこれすげぇ!愛妻弁当じゃん!」

「あれっ?京平彼女いたの?」

予告通りに30分で話し合いを切り上げた京平は、スタジオに向かい、休憩時間にもらった弁当を広げると、メンバーに囲まれ質問攻めに合っていた。

それもそのはず。

女の噂を聞かない彼が愛情たっぷりすぎる愛妻弁当を持ってきたのだから気にならないわけがない。


「話せば長くなんだよ。べつに彼女じゃねーし」

「きゃっ、悪いおとこっ!」

ベース担当のトシがおかま口調で冷やかした。

「もしかしてあの子か?ウチの学校で有名な…なんつったっけ?」


隣にいたハルが身を乗り出しながら興味津々に横から口を挟んできたが

ハルの想像している人物は多分あたりだ。


学年こそ違うものの学校は同じで、彼はそこの三年生。
最近京平とよく一緒にいるその子だと気付くまでそう時間はかからなかった。


「一条だよ、一条茨」

「あ~っそうそう!茨姫!」


ハルがスッキリしたような顔でポンと手を打つと、他のメンバーはぽかんとしながら

「なにそれ?」

と声を揃えた。



「一条っつー痛い女がいてさー、自分の事茨姫って呼んでくれとか言う、だいぶ頭おかしい女なんだよ。なんでか俺付き纏われてんだよね」

「でも見た目はすげぇ可愛いんだよなー…」


軽く頬を染めながら遠い目で呟くハル。


「じゃあ代わってくれよ!!ほんと疲れんだから同じ空間にいると!!」


他人事だとばかりに軽薄なその言動は京平をイラッとさせた。