頑なに実家には来るなと言われて一度も行ったことはなかったけれど、住所を調べる事は造作なかった。


一枚の紙を頼りに辿り着いた場所は…


「…ここか?」


俺の想像を遥かに越えた立派な家で。


お金に困っている様子を見せていたけれど

「金もちなんじゃねーのかよ…?」

と思ってしまうほどに堂々とそれは建っていた。


車庫は一つに留まらず

大きな門から玄関まではかなりの距離。


一瞬間違えたか?とも思ったが、表札には“石垣”の文字があったため、ここで間違いないはずだ。


…一体どうなってんだ?


とにもかくにも突っ立っているだけじゃ始まらないので、俺はインターホンを押してみる。


ピーンポーン。


『はい』


女の人の声がした。
お母さんだろうか?

それともこれだけ立派な家に住んでるくらいだし、お手伝いさんか何かか?


「あの…俺、留美さんと仲良くさせてもらってる川端といいます。留美さんはいらっしゃいますでしょうか?」


普段こんな丁寧な言葉を使わないので、何度もつっかえそうになるが、辛うじてそんな恥ずかしい事態は免れた。


しかし次の瞬間

俺は信じられない言葉を耳にする事になる。