予鈴がなり、クラスメイトが全員、自分の席に戻り始めた

私も席に着き自分の机の中から次の授業の教科書や資料集などを出す

出し終える頃、後ろから悲鳴のような歓声があがった

驚き、振り返ると

教室のドアから顔を出す樹がいた

歓声をあげた女の子と何かを話していた

そして、彼女が私の方を指さす

樹はその指先の方角から私を見つけだした

そして、目が合うと手招きをした

私は席を立ち、樹の方へ行った

「ごめん、生物の教科書貸して!」

手を合わせながら樹が言った

「生物、今日はないから、持ってないや」

私は毎日教科書を持って帰るので、時間割以外のものは持っていない

「そっか…」

樹が少ししょげた

生物の先生は遅刻、居眠り、忘れ物にはとても厳しいのだ

樹が重い足取りで、教室に戻ろうとした時

ちょうど将太がどこからか、帰ってきた

「おぅ。樹。どした??」

校庭で遊んでいたのか、将太はまた汗びっしょりだった

「生物の教科書忘れた…」

「俺、持ってるよ。貸してやろうか?」

樹の下がっていた首が一気に持ち上がり、将太を見つめた

「マジで!?」