「それより、ヒロインの鞭が実は音だけで痛くないんじゃないかと思うなー」

「そうなの?」

「だってあれって…」


そんな映画の話でひたすら時間が潰れていった。

気がつけば、放課後の喫茶店でやってることとたいして変わらないことをしている。

むしろ、コーヒーもクッキーもなくて立ちっぱなしで居辛い。


「もう雨やんだし帰る?」


そして、いつだってそんな時間の終わりを告げるのは透だった。

気がつけば、電灯も点っている。


「そうだね。お腹空いちゃった」


私の手を不意に、透がつかむ。

顔を上げると真剣な顔に、少したじろいだ。


「…何?」