映画の中盤に差し掛かったところで、透の腕が私の肩にまわされた。


「良いじゃん」


言って、ぐいっと引き寄せようとする。

抵抗する私。


「ここ人前だから。公共の場だから。
それよりドーナツ食べたら」

「じゃあ食べさせて」


その口にドーナツを一つ詰める。


「ありがと」

「な、なんで更に力をこめるんですか
食べさせたんだから、離してください」


誰にも見られていないよね。


今日公開初日でもないので人はまばら。

それでもつい振り返ってしまう。


「…兄貴?と…」