まばたきもしない
強い瞳が近づくのを
私もまばたきせずに
じっと見ていた。
瞳の中に私が移っているのが見える。
不意に
仁科の目がどこかへそれた。
――じゃなくて
真っ暗なんだ。
私は目を閉じたんだ。
唇が
重なった。
私の生乾きの髪の毛に指が絡まって来て、優しく引っ張られた。
息も出来ない程に
強く
熱く
それは多分ほんの数秒だったと思うけど。
キスをした。
まぶたの裏がオレンジに染まって、ゆっくり目を開けると、背中を向けて仁科が椅子に座っていた。
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