君にうたう

「真央!」

学校からの帰り道、舞が声をかけてきた。

「おう。」

小走りでこっちにやって来る。

「一緒に帰ろ。」



「あたしさ、この前啓太に会ったんだ。」


「それでさ、啓太に好きだって言ったの。」

突然でビックリした。舞が自分から何かを話すのは珍しい。

「啓太はなんて?」

返事は予想していたけど、一応聞いてみた。

「あたしとは友達でいたいってさ。」

「そっか。」

俺は何も言わなかった。
きっと舞も、何も言わない俺だから話したんだと思う。

「やっと終わったんだ、
私の初恋。」

舞の方を見ると、スッキリとした顔をしていた。

「答えは最初から分かってた。でもさ、自分と決着つけなきゃいけないときもあるじゃん?」

舞らしいな。

舞は昔から白黒はっきりしないと気がすまないタイプだった。

「だから、そういう意味でも啓太にちゃんと言えて、良かったと思う。」

舞はまっすぐに前を見ながら言った。

「真央はどうなのよ?」

俺が黙っていると、舞は強い口調で聞いてきた。

「茅衣に気持ち伝えないの?」

「でも、アイツは啓太が好きだろ。友達としか思っていない俺が告白しても、アイツを困らせるだけだ。」
「そんなの言いわけよ。
フラれて、今の関係が壊れるのが怖いだけのくせに」
俺は返す言葉がなかった。舞の言うとおりじゃないかと思ったからだ。

「後は自分で考えなよ。
あたしが口を挟むことでもないし。」

そう言うと、舞はスタスタ行ってしまった。

空を見上げると、雲が夕日に染まっていた。
茅衣とか啓太のことは抜きにして、俺はどうしたいんだろう?