リビング

足一つ前に出す事ができない。
逃げよう逃げようと思考が回る。
どうやっても恐怖に打ち勝ち、亡き父から教わった本当の正義を貫く事ができない…!!!


自分を犠牲にしてまで、他人を助ける義務はあるのか?
この言葉が、慎吾の逃避文句だった。


慎吾の拳を握る力が強くなる。悔しくてたまらない。
今また実感している。自分の無力さ、卑怯さに。


「父さん……俺の正義は…父さんから教わった正義は…」

恐怖に打ち勝つ事はできないのか!?


そう言おうと力んだ時、六時を告げるチャイムが校庭中に鳴り響いた。
はっと我に返る慎吾の目に映った空は、もうオレンジに染まっていた。