リビング

冷たい風が慎吾の髪をばさつかせた。
風の冷たさにもう秋だな、と実感する。

風を感じながら目を瞑った。そして仁の言葉を心の中で何回も何回も唱えるように繰り返す。


『悩むだけじゃ報われない』

じゃあどうすればいい?悩まずにどうすればいいんだ?一体どうすればクラスメイトを、友達を助ける事ができるんだ?


本当は知っていたのかもしれない。
気付くのが怖くて、わからないフリをしていただけだったのかもしれない。


慎吾がまだ小さい頃、小学校の低学年ぐらいの頃だろうか。
不運にも交通事故で死んだ父にしつこく聞かされていた言葉があった。


『本当の正義とは、助ける事にあるんだ』

慎吾のお人好しな性格は父親に似たのかもしれない。