リビング

「どうした?悩みでもあるのか?」

同じ陸上部に所属する親友、仁が優しく問う。
慎吾は暗い顔をしてゆっくりと頷いた。

仁は慎吾の隣に腰をおろすと、誰にも言わないから相談しろ、と本心の笑顔で言った。
その温かい笑顔を見て、慎吾は安心したのか実は…、と悩みを打ち明けだした。

「今日…あいつ、宗太の本燃やしやがったよな…」

慎吾の言うあいつとは、翔の事だとすぐに理解できた。
仁も慎吾も宗太と同じクラスの生徒で、あの時の現場を自分の目で見ていたのだ。

「それだけじゃない…。宗太、あの時間以降みんなにいじめられまくってる」

慎吾が泣きそうな顔で語る意味を、流石の仁もわからなかった。
ただ一つわかっている事は、慎吾は誰よりもお人好しで誰よりも優しい少年だという事。