リビング





[2]

「冴中、ボーッとして、どうしたんだ?」

「あ……あぁ、何でもない」


陸上部に所属する冴中 慎吾は、放課後にいつも実施されるハードなクラブ活動を終え、一人校庭のベンチに座り黄昏ていた。

クラブ時にかいた大量の汗はもうすっかり引いていて、トラックを百周も走らされた疲労も少しはましになっていた。


慎吾は陸上部の中でも足が早い方で、後輩達からかなりの信頼と尊敬を集めていた。いや、後輩だけじゃない。顧問の先生はもちろんの事、同級生からも尊敬の眼差しを送られている。

そんな慎吾にも、悩みがあった。
人間なら誰しも悩み事の一つや二つはあるものだ。
外見のコンプレックスや成績の事。
友達関係や異性の事。

中学三年という思春期の今の時期、悩みぐらいあっても当然だった。