リビング

教室が重たい空気に包まれる。
皆の目線は、ぼろぼろ涙を流している宗太に集まっていた。


誰かが小声で言う。

「可哀想…よね」

「うん…。さすがに…今のはね」

だんだん小声で喋る人数が増えていき、ひそひそひそひそと小さな声に教室は制圧されていた。


「でも…あいつって今日が初めてじゃないよね?」

「なんか毎日やられてない?」

「翔にやられたのは初めてだよ。まぁ、毎日いじめられてるっちゃあいじめられてるがな」


一分でも時が経つ度に彼らの良心は溶けてゆき、声は元の大きさに戻っていた。
いや、

「それより知ってるか?隣町の中学で殺人事件が―――」

宗太への感心と同情さえもなくなっていた。