長く綺麗な黒髪、アイドルみたいにスタイルも良く、俺の中で寸分の狂いもなく美しい人に分類された。
一目惚れなんて有り得ないと考えている。でも、今なら何だかわかる気がする。

「ごめんなさいっ!」

なぜ彼女は謝っている? そもそも俺とどんな関係なんだ?

あ、もしかして医者の言った友達か。俺にはこんな可愛い友達がいたのか!


密かに喜んでいる俺の心は、次の瞬間医者に破壊された。

「彼女は君と同じで、事故に巻き込まれた中の一人だ」

ちっ、この医者、もうしばらく妄想させてくれても良かったのに。案外気が利かないんだな。って言っても、今の医者は気が気じゃないんだろうけど。

それはそうと、事故ってなんだ?


数々の疑問が頭の中を飛び交い、上手くまとめられない。

「悪いね、千羽さん。彼は今一時的な記憶喪失なんだ」

医者の言葉に、千羽と呼ばれた女性は息を飲んだ。

「ホ、ホントに? えぇ、どうしよう……それって大変なんじゃ……ああ、何てことに……」

「落ち着いて落ち着いて。一時的だと言っているだろう? もうすぐ彼の友人が見舞いに来る。何か刺激になって、記憶が戻るはずだ。心配なら君もこの場にいればいい……本音寝ていて欲しいのだが、そうはいかなさそうだね」

そう言って、医者は部屋を出た。