黙々とデッサンをしながら、シオンは時折こっちを見る。

「……」

 その度に、何か言いかけてはまた俯く。

 そんなことが何度かあり、俺は声をかけてみることにした。

「なあ」

「はい?」

 弾かれるように、シオンは顔をあげた。

「なんでしょう?」

 のぞきこむように身を乗り出すシオン。

 聞きたかったことが言い出せず、俺は別のことを聞いた。

「今、海淵に男子は3人いるんだよな」

 すると、シオンは首を振る。

「本当は、4人だったんです」

「だった?」

「ええ。ただ、その中の1人が問題児で」

 シオンの表情が、にわかに暗くなる。

「問題って、女子をナンパしまくったとか?」

「そうです」

 シオンは辛そうに頷く。
「ゲームやマンガに感化されて、ハーレム気分で転入してきたようです。その行状の度が過ぎるということで、退学になりました」

 いるもんだな、そういうバカが。

「そりゃ、男子の印象も悪くなるかな…」

「あとの1人は、義務登校期間が過ぎると全く学校に来なくなったそうです。私が転入して来る前のことなので、詳しいことは分かりませんが」

「ふうん…」

 俺も通学するつもりはなかったんだし、それ自体はどうこう言うことでもない。

 しかし、その残る1人がなぜ来なくなったのか興味を引かれる。