駅前のそば屋。

 親父と入口で落ち合った俺は、海淵での転末をぐちぐちと話していた。
「そら、また災難やったな」

 湯飲みを両手で包むように持ち、親父は言う。

「せやけど、今更ヨソ行きます、言うわけにはいかんしな。女装するわけやなし、一月の我慢や」

「まあ、そらな。他にも男はおるらしいし、大人しぃしとけばええことやしな」

 食事をしながら話しているうちに、腹は固まっていた。

「ほんで、親父は仕事どないやねんな」

 もともと開発企画部にいた親父は、畑違いの人事部に移るのを嫌がっていたんだ。