背後から聞こえた声に反応してしゃがみこんで声がした方に視線を向ける。

水泳部がプール掃除に使うゴムホースを片手に相棒の勝ち誇った顔。

「先生、暑くない?」

ゴムホースの先をぎゅっと摘むと勢いよく伸びる水。

真っ直ぐとんだ水の先には先生の顔。

先生の手の力が抜けると、今度はもう片手を強く握られる。

「走れ!」

私は立ち上がると、手を握られたままプールサイドを駆け抜け、そのままグラウンドを横切り、校門へ。

濡れた制服もそのままにただひたすら走る。

握られた手がアツい。

私達は蝉の声に囲まれながら校門を出た。

さっきまでうるさかった蝉の声が心地よく、爽やかに聞こえた。