「――だから、絢ちゃん」
ぼーっと眺めていたら、突然、呼ばれた。
「あっ、は、はいっ!!?」
「……はなし、聞いてた?」
「はいっ!!」
返事すると、樹さんはまた王子サマみたいな笑顔をみせた。
「斎が女の子とデートするなんて、それは、そのこがとくべつだって証拠だから」
……藤岡くんとデートするのは、あたしだ。
つまり、
「……あ、あたしが藤岡くんの特別だって言ってるんですか?」
「うん」
即答で答えるけど、そんなことは絶対ない。
だけど……
「ほんと、だよ」
樹さんが言うと、ほんとうに聞こえる。
少し、そう思ってしまう。
ううんだめだめ、変な期待はしないほうがいいよ……。
あたしは自分の頬をたたいた。
ぺちっと音がして、少し痛む。
気合い注入だ。
「と、とりあえずっ!! 日曜日がんばりますっ!!」
まずは、それから!!
待っててください藤岡くん!!
……そうして意気込んだあたしは、そのとき右京さんが、
怪しい笑みを浮かべたのを知らなかった。


