「……なんで俺じゃねえの?」
篁くんの本音を聞いてしまった。
「奪ってやる」なんて笑って言ってた裏側で、「なんで」って気持ちのほうが大きかったんだ。
あたしのこと信じて、また会いに来てくれたのに。
なのに、あたしは。
「こんなんなるんだったら……あの日、奪っとけばよかった。
ムリヤリにでも心ごと、絢のぜんぶ手に入れとけばよかった」
少し震えた声が、耳元で響く。
「欲しい」
丁寧に、注ぎ込むように。
「欲しい」
鼓膜まで通り越して、脳に直接訴えるように。
「欲しい……絢」
――ごめんなさい。
まっすぐに伝えてくれる気持ちに、
あたしは応えられない。


