さっきまでの強い力が嘘みたいに、柔らかく引き寄せられる。
突然すぎる行動にさらに硬直する体をほぐすためなのか、耳に息がそそがれた。
「俺、斎より強いよ?」
あたしの体の力が抜けたのがわかったからか、そのまま話し出す篁くん。
でも標準語なのは変わらない。
「知ってる……」
震える喉から絞り出せるのはこのくらいだった。
「……お願いだから、斎と比べないで。
確かに細くて頼りねーかもだけど、絢のことぐらいは余裕で守れるし、
なにより絢のこと愛してるから」
その真剣な声色に、あたしはうなずくのが精一杯で。
そんなあたしを篁くんはきつく、それでも優しく、抱きしめる。


