篁くんは仕事があるからって急いで帰ったし、 翼は右京さんに連れ去られた。 いつのまにか、教室にはあたしと藤岡くんのふたりだけだ。 膝の上の両手を握り、もういちど藤岡くんを呼ぼうとした瞬間。 藤岡くんがあたしを見た。 口はへの字、怒っているというより、拗ねているような表情に拍子抜けした。 ぽかんとしたまま見つめていると、藤岡くんがあたしに話しかけてくる。 「……オマエ、わかってんの?」 「へ?」 何を? そう聞き返すと、またそっぽを向かれる。