「……で、誰なん? その“アイツ”って。翼ちゃんの彼氏?」 「ハッ、アイツなんかを彼氏にするくらいだったらあたしは絢と付き合うっつの」 盛大に顔を歪めて顔をそむける。 風当たり厳しいな、右京さん。 そんなにイヤなのかな翼は。 「えー嫌や、絢は俺のやもん」 そして、篁くんはそう言ってあたしを窒息死させるかのごとく抱きしめるのをやめてほしい。 息苦しいし、まわりの視線も苦しいし。 なによりも、腕のなかで香る篁くんのにおいが昔を思い出させて、 心を乱す自分が嫌だから止めてほしい。