静まる空気に、気まずい状況。
藤岡くんはあたしを見下ろしている。
何も言われないのは余計に困ると思った。
「藤岡くんは……篁くん嫌いなの?」
あたしが顔を上げると色素の薄い瞳と目があう。
藤岡くんの長いまつげが影を落としていた。
「……そーいうんじゃねえ」
「じゃあ、何?」
藤岡くんの篁くんに対するあからさまな冷たい態度は何か理由があるんだよね?
薄い唇から吐き出される白い息を見つめながら答えを待つと、
手のひらでおでこを押された。
その力で、頭だけ後ろに後退する。
手がはなれて体制を立て直したとき、もう藤岡くんは階段を降り始めていた。
あたしは、その背中になにも言えなかった。


