『なんだよ、そのアホ面』
ジュウゴはそう言ってクククッと笑っている。
そりゃあアホ面にもなるよ。
だって許婚だよ?
親に決められた相手だよ?
自分の好きな相手じゃないんだよ?
ジュウゴの奥さんに、芽依がなるってことだよ?
アホ面にならなくてどんな顔しろって言うのよ?
『そんな驚くことでもねぇーよ。
芽依んちの会社、俺んちの子会社だし。
ま、親が異常なくらい仲良いからな。
こうなることは中坊んときからなんとなく分かってた』
サラッと言うけどあたしにとっては異次元の言葉だ。
「ジュウゴは芽依のこと…好きなの?」
そう聞くとめんどくせぇーみたいな顔したジュウゴは言う。
『好きじゃねぇ。
アイツはイイヤツだとは思うけど、好きじゃない。
言うなら友達としては好きだ。
でも、俺はサクラ商事を引き継ぐためだったら芽依とだって誰とだって結婚する。
それで親父の会社が俺のものになるならな。』
そう言ったジュウゴの顔は小学校で毎日のようにあたしとケンカしていた、あのジュウゴの面影がなかった。
なんて言えばいいんだろう。
とにかく、目が輝いていた。
なんの不安もなく、真っ直ぐに明日だけを見ているような。
そんな、目だった。


