ドクッドクッと大きな音をたてる心臓。


否定しなくちゃ。

違います。あたしは婚約者です、って言わなきゃ。


頭ではそう思っているのに、口に出すことができなかった。

ウソをつくという罪悪感に邪魔されたからだ。




『晴弥はきっと、18までに婚約者を決める遊馬家の決まりのためにあなたを婚約者だ、と言ったんだろう。


沙羅さんも、森本か、瑞季から聞いているんだろ?』


どうして…

気づくと、そんなことが口から出ていた。



『隠さなくてもいい。

俺はそんな決まりを気になんてしちゃいないんだ。


18になって、晴弥に決まった人がいなくても無理に結婚させようなんてこれっぽっちも思ってないんだからな』


そう言ったお父さんは最高に優しい笑みを浮かべる。



『焦らないでほしいんだ、晴弥に。

ゆっくり、じっくり考えて生涯のパートナーを考え欲しいって思ってる。


すまないな、沙羅さん。

キミを巻き込んでしまって。』


お父さんには何もかも、お見通し…?

あたしは立ち上がり、お父さんに向かって頭を下げた。



「ウソをついて…すみませんでしたっ…」