偽装婚約~秘密の契約~






『失礼いたします』


それから約10分後。

瑞季さんの声が聞こえてきた。



『沙羅、立て』

晴弥に小声で言われ、慌てて立ち上がる。



「ただいま、晴弥」


黒のドレスをまとったキレイな若い女の人が入って来た。

そして晴弥を見つけると抱擁する。


もしかしてこの人が晴弥のお母さん…?

にしては、若い…よなあ。


「こちらの可愛らしい女の子は?」


そしてあたしに視線を向けると晴弥に聞く。



『ゆっくりあとでご紹介します。

とりあえず、座ってはどうですか?


母さん、父さん』


…え?今…晴弥、あの猫かぶりスマイル出したよね?

もしかして、晴弥、親の前でも猫…かぶってるの?


唖然としているあたしの前を男の人が通りすぎる。


ほのかに香る、良い匂い。

スーツをビシッと着こなし、背筋を伸ばして歩くその後ろ姿はあまりにもカッコ良かった。


ただ、カッコイイのは後ろ姿だけではなく、もちろん、顔もだった。

この人が…晴弥の、お父さん。

ダンディな男の人。


キレイなお母さんにダンディなお父さん。

そりゃあ晴弥もあんだけカッコよくなるワケだ。