偽装婚約~秘密の契約~





『終わりました。

目を…開けて下さい。』


そう言われ、あたしはゆっくりと瞼を開ける。


そして、鏡の前に立つ。



「………誰?」

思わず、口から零れた。


そんな呟きに瑞季さんはクスクス笑っている。



『沙羅様。

ものすごく、お似合いです。


そして、鏡の中の沙羅様は私の横にいる沙羅様ですよ?』


優しく微笑む瑞季さん。


いや…あたしじゃないよ、鏡の中の人は。

だってあたし、こんなんじゃないもん。


濃い青のドレスを身にまとい、髪の毛は巻かれて、綺麗に化粧がされている。


初めて見るそんな姿に開けた口を閉じられない。



『瑞季。用意できたか?

そろそろ来る頃だろ?』



『準備万端です。

沙羅様、行きましょう。』


瑞季さんに声をかけられ、我に返る。


そして目の前には晴弥がいて。



『………ああ、沙羅か。

誰かと思った』


なんて笑いながら言って。


綺麗だよ、とか

可愛いよ、の一言も言えないワケ?