『大は小を兼ねる』
一概にそうとは言えない。
例えば指に刺さったトゲなんかを取る際、大きいタイプの毛抜きでは対応しきれない時がある。小さいタイプの毛抜きを使わなければ、絶対に取れないトゲがあるのだ。しかも、そこで意地になって大きいタイプで頑張りすぎると、途中で切れて、根本が刺さったままの状態で成す術がなくなり、泣き寝入り。という最悪の結末を迎えることになる。
リュックを選ぶ際も同じで、大きいのを買ったはいいが、思いのほか持っていく物がない。という事態に陥ることがよくある。だいたいそういう時は枕で穴埋めする羽目になるのだが(そうでもしないとパフンパフンになってしまうから格好悪い)、いかんせん枕を詰めて出掛けると、たとえ目一杯おしゃれしておしゃれスポットを洒落っ気たっぷりに歩いたとしても、全然雰囲気が出ない。部屋を引きずってしまっているから、うまいこと街に溶け込めないのだ。しかも、枕が醸し出す匂いというのはどこか郷愁があり、何だか急に寂しくなって、何だか異様に帰りたくなって、何だか無性に泣きたくなってしまう。要するにしゃれ込んで青山に来たはいいが、しゃれにならないことになってしまうのだ。
「誰かと一緒にいれば別に問題ない」そういう問題ではない。確かに、二人でいれば気は紛れるかもしれないが、それはそれでややこしいことになる。
例えば彼女に「これ入れといて」みたいなことを言われたら最悪だ。チャックを開けるタイミングに困り、あたふたしてしまう。物がデカければ「かさばる」という理由で断れるかもしれないが、CDやこち亀を断る理由は一つもない。「あとで入れとく」としか言いようがない。そこで「何であとなの?今入れてよ!」とか突っ込まれたら最後だ。「別れよう」と切り出すしかない。「(枕がバレるぐらいならいっそ)別れよう」と。そして、その夜はその枕を濡らすことになる。
つまるところ、『大は小を兼ねる』という言葉を信用しすぎると、ろくなことがない。ほとんどが涙を伴う。「中にしておけばよかった…」そんな後悔の念に苛まれたまま、朝を迎えることになる。そして、パンパンに膨れ上がった目に大きめのアイスノンをあてがい、「目をピンポイントで冷やすにはデカすぎる…」と嘆くのがオチだ。


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