彼女の部屋は何だかイカ臭い。いつまで経ってもイカ臭い。季節に関係なく、平均的にイカ臭い。イカを飼っているのだもの。そりゃあ臭い。ヤリイカ、アオリイカ、スルメイカ、ホタルイカ、ダイオウイカ、ありとあらゆるイカがいる。イカが大好きなんだもの。そりゃあいるさ。
勿論、食べたりはしない。あくまでも見て楽しむ。時折、手に取って楽しむ。それが彼女のやり方である。
しかし、何故ここまでイカにハマったのか。味にハマった訳ではない。だとしたら彼女は一体、イカのどこにそれ程までの魅力を感じるというのだろう。足?目?口?いや、違う。その全てである。パーツ、パーツではない。彼女はイカそのものを愛しているのだ。
それが故に、学生時代は死ぬ程つらかった。何せ給食でイカリングが出るのだから。(それも結構な頻度で。) 彼女はおいしそうに食べている友達が信じられなかった。殺意を抱く事さえあった。イカの気持ちを思えば当然である。リング状にされ、卵と衣に散々もてあそばれたあげく、無惨にも180℃の油に葬られた、イカの気持ちを思えば…。だから彼女はいつも、自分のイカを土に返した。昼休みを利用して、こっそり供養した。せめてもの償いである。
金田真穂。深い思いやりを持つ、心美しき女(ひと)である。それだけに、今回の事件は悲しくてならない。あろうことか、出店でおいしそうにイカ焼きをほうばる彼女の姿がフライデーされたのである。
この件に関して、彼女が報道陣に語った内容は以下の通り。苦しまぎれのコメントである。
「あれは妹の志穂よ。あの子はタコは食べないけど、イカは食べる子よ。」