バツイチ。
言っている事とやっている事が全くもって噛み合わない。その上しゃくれている。いろんな意味で噛み合わせの悪い女である。
彼女の家の玄関には『土足厳禁』と書かれたプラカード的な物が置かれているのだが、思いっきり猫を飼っている。そればかりか、彼女は猫アレルギーなのである。もっと言うと、白猫なのに名前は『ヤマト』だ。何のこっちゃ分からない。理解に苦しむばかりである。
こんな事もあった。元夫と回転寿司に行った時の事である。無類のタコ好きである郁代は、当然初っぱなからタコを注文した。「あいよ!」と威勢良くタコを流した板さんであったが、彼女が手に取ったのは何故かイカ。その後も同じ要領で、イカを注文すればタコを。タコを注文すればイカを食べた。そのうちさすがに板さんも気付き始め、タコを注文されると迷わずイカを流した。すると、今度は普通に(もう何周しているのかも分からないカッピカピの)タコを取った。そして、板さんに向かって「残念でした~!」と言わんばかりに、あっかんべーをしてみせた。大の大人のあっかんべー程腹の立つものはない。しかも不細工だ。
「次のタコでシャコを出してやる!」板さんはそう心に決めた。が、彼女の注文はシャコ…。一瞬たじろぎはしたが、そこは板さん、ここぞとばかりにタコを流してやった。しかし、彼女が手にしたのは何とノーマークのミル貝。そして「もともとミル貝が食べたかったのでした~!」みたいな顔をした。
この女、一体何を考えているのか。
何も考えていないのだ。考えている事と言えば、せいぜい明日の天気だとか、明日の白鵬だとか、アシタバの使いようだとか、そんなもんだ。
別れて当然である。
夫も我慢ならなかったのだろう。数日後、「さよなら」とだけ書いた手紙をテーブルの上に残し、黙って家を飛び出した。
マチャアキ的エンディングである。星を3つ上げよう。