「いや~もてもてだねぇ‥一ノ瀬 煉(レン)くん?」


「えっ ほ‥保坂‥!?藤野‥!?」


薫の声に気づき、一ノ瀬はあたしたちの方を振り返って見た


あたしと薫は隠れていた建物からひょっこりと顔を出した


「いまの子けっこうかわいかったのになぁ~もったいなーい」

そう言いながら薫は女の子が去っていった方向を見ていた


「お前ら‥いつからいたんだよ‥のぞきなんて趣味悪ぃーぞ‥。」


一ノ瀬があたしたちの方に歩きながら言った



「のぞきじゃないし!偶然よ!偶然!
拓海がねっ 一ノ瀬のこと探してたの
『もうすぐ部活始まるのに一ノ瀬来ねぇー』って。
だから拓海には先に部活に行ってもらって、
あたしと捺で一ノ瀬のことを探しにきたのよ。ね、捺」

薫があたしに同意を求める

「え?あっ うん‥」


返事をしながら
ちらっと一ノ瀬の方を見た



さっきの告白に動揺しているわけでもなく

そこにはいつもの落ち着いている一ノ瀬がいた



「あ~そーいや今日は絶対に遅刻すんなって言われてたんだった‥」


「まだ走れば間に合うんじゃない?」


「そうだなっ ありがとな!わざわざ!」


一ノ瀬はしゃべりながら少し小走りになった



「いいえ~!部活がんばってねー」



グッ グッ


薫が軽くあたしの腕を自分の腕を擦りつけるように押した


ぼーっとしていたあたりはそれに気がついて急いで一ノ瀬を見た


一ノ瀬はすでにもう少しで見えなくなるようなところまで走っていた



「が‥がんばって!」


「おう!じゃーなー!」


そう言った直後 一ノ瀬の姿は見えなくなった