「何度も言ってるでしょう? もっと左右のバランスを考えて。 右手がうるさすぎるわ。ここのメロディーは左手なの。 力加減は3:1よ? それに、感情がこもってない。もっと歌うように」 普段は優しい母も、ピアノのことになると人が変わる。 今は“親子”ではなく ピアノ教室の“先生と生徒”という関係だ。 「もう一度」 そう言って指差されたところからもう一度演奏するけれど、 それもまた、すぐに止められてしまう。