「ちょっとテニス出来るからって、調子乗るのもいい加減にしなよ?藤堂サン」 「そんなつもりありませんけど」 無駄に威圧するような低めの声にも怯まないあたしが気に入らないのか、 沖津先輩が勢い良く手を伸ばす。 その手はあたしの顔を通り過ぎて、 あたしがもたれていた体育館の壁にバンッと突かれた。 ……ドラマの見すぎだろ。 ここまでくると笑える。 ――一人じゃ何も出来ないくせに。