黙って自転車を押すあたし。 そんなあたしに傘を差してくれる裕斗。 さっき走ったのと同じ道だとは思えないくらい、 家までの時間を短く感じた。 「――ありがと」 車庫に自転車を入れて、裕斗を振り返る。 「タオル、持ってくる?」 「大丈夫。言ったじゃん、雨避けれるって」 「じゃ、傘いらないじゃん」 「借りといてやるよ」 そう言って笑う彼。 それを見て、やっぱりつられて笑ってしまう。